カラメル焼き

青空と鳥のさえずり、そよぐ風
何とも気持ちのいい午後のひととき。
愛猫は今日も丸くなり、お腹がゆっくり膨らんだり、戻ったりを繰り返しながら、寝ている・・・時折、耳をピクピクさせて風の音を聞いている。

そんな、まったりとした午後に、突然何かが起きるはずもなく、みゆきも猫の側で、うたた寝をしていた。

穏やか、安心、平和・・・・

こんな毎日が、ずっと続いてくれたらいいのにな・・・と、ウトウトしながら、そんな事を考えていた・・・。

ピピッ、ピピッ、ピピッ・・・
アラームの音で、みゆきは一気に現実に引き戻されていく。

みゆきは、短編小説を書く作家であり時々、エッセイも書いたりしている。
今回は、短編小説を書いているのだが、締め切りが迫っていた。

「あ~どうしよう・・ストーリーが降りてこない~」とつぶやきながら、上を見上げる。

みゆきの場合、いつも何か、インスピレーションのようなもの?荷物がドッサって上から降ってきて、小説やエッセイを書いている。

しかし、今回は、なかなか降りてこない。
「あ~どうしよう・・・」

その時、子供の頃に食べていた、カルメラ焼きのようなものが、降ってきた感じがした。(みゆきの頭の中の映像)

そうだ!子供の頃の体験をストーリー化すればいいかも?

海で拾った貝殻、実は古代アトランティス時代に誰かが大切にしていたものだったり・・・
友達と一緒に行った、あの洞窟はタイムトンネルだったり・・・
友達と一緒に遊んでいた時、たまに来る見知らぬ少年は、実は、よその星からきた子だったり・・・

子供の頃の事を思い出していると、いろいろなストーリーが作れそうな気がしたきた。

「う~ん、どれを選ぼうかな・・・」

みゆきはワクワクしながら考えた。

「うん、これにしよっと!」
「にゃ~」
側で寝ていた愛猫が急に鳴いた。

窓の向こう、白い野球帽をかぶった少年が、自転車に乗って遠く離れていくのが見えた・・・