赤い風船
年の瀬も迫り、街は慌ただしさを増し商店街では年内一掃セールののぼり旗が、色とりどり賑やかに街を活気づけていた。
そんな街の慌ただしさとは裏腹に、千冬はのんびり買い物をしていた。
行きかう人たちは、足早に通り過ぎ、それぞれの目指すその店に吸い込まれていく人、出て行く人・・・
千冬は人流れを縫うように、歩いていると目の前に赤い風船がフワッと現れ「えっ!何?」
とっさに千冬は、その風船を捕まえた。
辺りを見渡すと、小さな女の子が、人混みの中、見え隠れしながら、こっちに向かって歩いてきた。
やっとのことで、千冬のところに辿りついた女の子は、赤い顔をしながら、風船を指さし「ソレ、ワタシノ、タイセツナモノデス。ソレガナイト、オウチ二カエレマセン、イツモ、ココニクッツイテ、イマスガ、ハズレテシマイマシタ」
と、小さな女の子は、手首にキラキラしたブレスレットのようなものを見せてくれた。
千冬は「そう、今度は外れないように、しっかりくくりつけてね」と言いながら、女の子に風船を渡した。
女の子は、嬉しそうにニッコリ微笑み「アリガトウ」と言って、また人混みの中に消えていった・・・
買い物をすませた帰り道、千冬はちょっと不思議な女の子の事を思い出していた。
ちゃんと、お家に帰れたかな・・・?あんな小さな女の子が一人で歩いてて、やっぱり一緒に付いていってあげれば良かったかな・・・
千冬は急に、女の子のことが心配になった。
もうすぐ、日が暮れる・・・
赤く染まった夕日が千冬の心を後悔させる・・・
赤く染まった夕日・・・
赤く染まった夕日・・・赤い太陽・・・えっ?
今、赤い太陽がかすかに、揺れた?
うそ?
太陽って揺れないよね?
でも、確かに丸い太陽がふわふわ揺れたのだ・・・
そう・・・無事にお家に帰れたんだね・・・・
小さな女の子からのメッセージに、千冬の心は、赤い夕日に染められた。