夢を見る星

 


 秋も深まり、山々の木々は赤や黄色の葉に変わり周りの景色に彩りを添えた。

そんな、景色をボーっとしながら、何となく黄昏ている、いち子。
この星に来て、もう六十年が経とうとしている。

自分は何をしに、此処に来たのか?

あまりにも、時間が経ちすぎ、あまりにも、いろんな事が起きて、それらに必死になって対応してきて、此処にきた目的を忘れてしまったのだ。
記憶の迷子。


もうすぐ、日が暮れる。
青空だった空色は、薄くなり灰色の雲が流れていく。

秋の夕暮れは、どこか寂しく冷たい風が吹いてきた。

自分の元いた星も、こんな感じだったのかな?

いち子は、急に寂しくなった。
空を見上げると鳥の群れが、自分達の行くべき場所に飛んでいった。
少し遅れて、一羽の鳥が飛んできた。
あの群れから遅れてしまったのだろうと、いち子はその鳥を眺めていると、その鳥は、いち子を目がけて飛んできた。
近づいてくるにしたがって、鳥の姿がはっきりしてきた。
銀色の翼・・・いや、銀色の鳥だった。
うそっ!銀色の鳥?
いち子は、驚いた。

銀色の鳥は、いち子の頭上までくると、何か光のようなものを放ち、いち子はその光に包まれた。
光に包まれた、いち子の体は、フワッと宙に浮き、銀色の鳥はいち子を背中に乗せて舞い上がった。
すると、目の前に大きな丸い水晶で出来たトンネルのようなものが現れ、その内側は透明でキラキラ光っていた。
銀色の鳥は、いち子に「あなたは、この星で夢をみたくてやってきたんでしょ?ずいぶん長い間夢を見てきましたね。そして夢の中で、いろんな経験をして、いろんな感情を体験する事ができましたね。あなたの元いた星で、あなたは、何不自由なく暮らしていましたが、それがあなたにとっては、退屈で退屈で仕方なかった。そんなあなたのために、眠って夢をみるこの星を見つけたのです。夢の中では、自分の思うままには、いかなかったり、逆に思ってもいない事が起きたり、様々なアトラクションのような出来事が、仕掛けられていたので、予測がつかない分、楽しむ事ができたのでは?
そしてあなたは、この星でずっと眠り夢を見て、今やっと、目を覚まそうとしているのです。
さあ、今度はどんな星に行きましょうか?」
と言うと、いち子を背中に乗せて、透明でキラキラ光るトンネルに吸い込まれて行った。